武器輸出大国ニッポンでいいのか

著者・編者池内了、古賀茂明、杉原浩司、望月衣塑子/著

武器輸出禁止3原則の突然の撤廃、無人偵察機をイスラエルと共同研究、防衛省2017年度で軍事研究助成18倍に、武器輸出を前提とし、根幹に据えたアベノミクス…。安倍政権下で急速に進む「死の商人国家」「学問の軍事利用」。このままでは、学問の自由が脅かされる、日本は武器輸出大国になる、テロの最高ランクの標的になる。その恐るべき実態を告発し、警鐘を鳴らす、著名執筆陣が記す渾身の集団労作。
執筆陣は、池内了(名古屋大学および総合研究大学院大学名誉教授)、古賀茂明(元経済産業省官僚)、杉原浩司(武器輸出反対ネットワーク=NAJAT代表)、望月衣塑子(東京新聞社会部記者)。

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商品情報

発売日
サイズ・ページ数 四六判/192頁
ISBN 978-4-87154-148-0

目次

はじめに

1章 戦争を欲する社会にしてはならない
―元経産官僚が見る武器輸出解禁「悪魔の成長戦略」
古賀 茂明

「武器輸出三原則」を一瞬で撤廃した安倍政権
オーストラリアへの潜水艦商戦の顛末
欧米に見る「軍産学複合体」社会の恐ろしさ
どうなる防衛利権、軍事利権
良識ある官僚はますます孤立
市民が官僚にプレッシャーをかける有効な方法は
民生品の軍事転用をどう規制するか
無人偵察機のイスラエルとの共同研究
「死の商人」ではなく「希望の商人」「夢の商人」へ

2章 国策化する武器輸出
―武器輸出ビジネスの最前線から見えること
望月衣塑子
日本、潜水艦事業で脱落
終始、消極姿勢だった日本
オーストラリア国内での高い失業率
焦り出す日本
百戦錬磨のフランス、ドイツ、中国のけん制
武器輸出でのリスク
武器輸出反対ネットワーク「NAJAT」設立
狙われる潜水艦技術
尻込みする防衛企業や官僚たち
「商機は薄い?」
戦後、民需優先を進めた日本
防衛装備庁の本気度にも疑問符が

3章 急進展する軍学共同にどう抗するか
―問われる科学者の社会的責任
池内 了
はじめに ―「研究者版経済的徴兵制」


1 戦後の平和路線とその逸脱
軍事研究と決別 ―1950年の日本学術会議決議
米軍からの資金援助 ―1967年の日本学術会議決議
日本物理学会の変節 ―1995年の決議
巧妙になる米軍 ―直接援助と迂回援助

2 防衛省の戦略
防衛省との「技術交流」 ―先行する軍学共同
安倍内閣の3つの閣議決定 ―デュアルユースの活用
防衛省の防衛生産・技術戦略 ―研究者攻略法
安全保障技術研究推進制度の発足 ―軍学共同の本格展開
安全保障技術研究推進制度の推移 ―発足2年間の応募と採択

3 研究者として
東大情報理工学系研究科のガイドブック改訂 ―東大学長の見解
日本学術会議の動向 ―ようやく議論を開始したのだが
研究者の言い訳 ―「愛国心」とデュアルユースと自衛論

4 軍学共同に抗する
大学への悪影響 ―誰のための・何のための研究かを省察する
私たちの運動 ―軍学共同反対連絡会へ拡大


4章 「死の商人国家」にさせないために
―武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)の取り組み
杉原 浩司
グロテスクな本音
「武器輸出反対ネットワーク」結成前史
「モラルハイグラウンド」から「モラルハザード」へ
「紛争当事国」の存在しない世界!?
「ミスター武器輸出」堀地徹氏との対決
イスラエルと無人機共同研究へ
「レピュテーションリスク」という壁
巻き返しで狙われる学術界と中小企業
オールジャパン体制なんかいらない
日本版「軍産学複合体」の形成を止めるために
確信犯企業に対抗する
民生品の軍事転用に歯止めを
軍事費削って暮らしにまわせ
現在進行形の戦争をとらえる
武器輸出禁止法の制定へ
勝ってはいないが負けてもいない


あとがき

著者略歴

池内 了(いけうち さとる)
1944年兵庫県生まれ、1972年京都大学大学院理学研究科物理学専攻修了、理学博士。京都大学を皮切りに北海道大学・東京大学・大阪大学・名古屋大学の5旧帝大を経て総合研究大学院大学に勤務。
現在は、名古屋大学および総合研究大学院大学名誉教授。専門は宇宙物理学・宇宙論、科学・技術・社会論。
著書に、『宇宙論と神』『物理学と神』(いずれも集英社新書)、『科学の限界』(ちくま新書)、『科学と人間の不協和音』(角川新書)、『疑似科学入門』(岩波新書)、『科学・技術と現代社会』(みすず書房)、『重大な岐路に立つ日本』(共著、あけび書房)などがあり、最新刊は『科学者と戦争』(岩波新書)。

古賀 茂明(こが しげあき)
1955年長崎県生まれ。東京大学法学部卒、通商産業省(現経済産業省)に入省後、産業再生機構執行役員、経済産業政策課長、中小企業庁経営支援部長などを歴任。2008年国家公務員制度改革本部審議官に就任し大胆な改革を次々と提議。霞ヶ関「改革派の旗手」となる。
2011年9月末に経済産業省退官後も報道機関の自粛ムードの中で、圧力に負けず独自の見解の発信を続ける。
同年より大阪府市統合本部特別顧問を務める。
報道ステーションコメンテーターを3年間務めたが、安倍政権の圧力などにより2015年3月で降板。
2015年3月「改革はするが、戦争はしない」市民キャンペーン【フォーラム4】を立ち上げる。http://forum4.jp/
同年5月、外国特派員協会「報道の自由の友賞」受賞。
著書:『日本中枢の崩壊』(講談社)、『官僚の責任』(PHP新書)、『信念をつらぬく』(幻冬舎新書)、『利権の復活』(PHP新書)、『国家の暴走』(角川新書)など

杉原 浩司(すぎはら こうじ)
1965年鳥取県生まれ。1980年代半ばより市民運動に参加。PKO法反対、故・小田実さんら阪神・淡路大震災被災者による住宅再建への公的支援を求める「市民=議員立法」、ミサイル防衛反対、脱原発、秘密保護法反対などに取り組む。2015年の戦争法案審議では、集団的自衛権問題研究会ニュースレビュー編集長として、国会審議ダイジェストを発信。武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)代表。
『世界』別冊「2015年安保から2016年選挙へ」に「国会を市民の手に取り戻す―『戦後最長国会』審議の内実」を寄稿。同誌2016年6月号の武器輸出特集の座談会に参加。『ビッグイシュー日本版』2016年7月15日号特集「軍事化する日本」にインタビュー記事掲載。『宇宙開発戦争』(ヘレン・カルディコット他著、作品社)に「日本語版解説」を執筆。

望月 衣塑子(もちづき いそこ)
1975年、東京都生まれ。東京新聞記者。慶応義塾大学法学部卒業後、東京・中日新聞社に入社。千葉、神奈川、埼玉の各県警、東京地検特捜部などで政治家の汚職問題など事件を中心に取材。2004年、日本歯科医師医連盟のヤミ献金疑惑の一連の報道をスクープし、自民党と医療業界の利権構造を暴く。2009年には、足利事件の再審開始決定をスクープする。東京地裁・高裁での裁判担当後、経済部記者などを経て、現在は社会部遊軍記者。日本学術会議や軍学共同、武器輸出問題を主なテーマに取材。
著書に『武器輸出と日本企業』(角川新書)。『世界』2016年6月号特集「死の商人国家になりたいか」(岩波書店)で「国策化する武器輸出」を寄稿。二児の母、趣味は子供と遊ぶこと。
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